(この文章は、このHPを開設した2012年当時に書いたものです。)
保育者は、虐待が疑われる場合には、行政もしくは児童相談所に通報の義務があります。
「虐待かどうか」を保育者が「特定」する必要はありません。
「事実」の検証は、関係機関の連携の中で行っていきます。
しかし、「通報することで保護者との関係が悪くならないか・・・」そんな心配も多いはずです。
ここでは 虐待の可能性が疑われるこども・保護者への支援をまとめてみました。
虐待かどうかを「調査し判断する」のは、市町村の担当課や児童相談所の仕事です。保育者の役割は、最もこどもと接している機会が多いため、「気づくこと」が重要な役目となります。
しかし、「気づく」といっても なかなかそこは難しいものです。小さな「気づき」を見逃して、あとあと大きな事件や事故につながることもあります。「気づき方」(発見の仕方)は、またあらためてご紹介したいと思います。ここでは、「通報後の保護者対応のポイント」を3つまとめてご紹介したいと思います。 (げんき)
虐待ケースに関しては、様々なケースに立ち会ってきました。また、児童養護施設にいたため、虐待を受けたこどもたちとも生活を共にしてきました。「虐待」については、この1ページだけで、とてもご紹介することができないので、細かな部分は今回まとめずに、園でできること(やってほしいこと)を3つにまとめました。(げんき)
「通報したことで保護者との関係が悪くならないだろうか」。研修の際にも、必ず質問を頂く内容です。
虐待の疑いのある保護者は、ほとんどの場合、本人にその意識はありません。「しつけ」の一環だとおっしゃる方が多く、問題意識や自覚がない場合がほとんどです。そうした方からすれば、「通報」されたことをよく思わないこともあるかと思います。ここで大切なことを再度確認します。「通報」=チクリ。「通報」=犯罪、事件 ではないのです。おそらく、この「通報」という言葉のイメージがそうさせているのだと思いますが、何かしらの「罪悪感」を生む言葉です。
なぜ連絡するのか? それは もちろん、生命を守るという大きな目的がありますが、もっと現実的に伝えるとすると、「幼児期のこころのダメージは大人まで残る」からなのです。大げさではなく、その後の「この子の人生」を大きく左右してしまうからです。深く深く こころの一番深いところに残ってしまうのです。
保育者は、こどもたちに 幸せに成長して欲しい、そしてこどもたちだけでなく ご家族にも幸せに過ごして欲しいという願いを持っています。虐待の可能性を連絡するというのは、そうした想いがあるということを 発信し続けることが大切なことなんだと いつも感じています。 (げんき)
「もっと早く気づいてあげればよかったね・・ごめんね」
その想いを虐待の疑いのあるこどもに、きっと抱くはずです。
できれば、その「想い」を保護者にも持ってあげたいものです。
「そんなに子育てが大変だったんですね、、、もう少しその大変さを気づいてあげればよかったです、、ごめんなさいね」そうした思いを持つが大切です。
「あんなひどい親にそんな思いなんか持てません」「虐待したんですよ、あの親は!」。そうした気持ちになるのもとてもよくわかります。でも、忘れてはならない大切なことは、相手がどんなひどい親であったとしても、どこかで支援の手を伸ばすチャンスは必ずあったのです。そこに気づいてあげられなかったことは、是非伝えて欲しいと思います。
「虐待したこと」と「気づいてあげられなかったこと」 これはまた別の問題だからです。 (げんき)
「虐待をやめさせる」手伝いを関係機関は全体で行わなければなりません。
児童相談所や市町村や医療機関であれば、保護者のメンタル面での支援や福祉的なサポートを実施し、「虐待をしない」ためのお手伝いを行います。では、園では何ができるでしょうか?
きっと、何かお手伝いできることはあるはずです。ちょっとしたことでもいいのです。小さなことでいいのです。その小さな助けこそ、積み上げていくことで、大きな力を発揮するのです。虐待のケース会議にソーシャルワーカーとして参加させていただくことも多いのですが、「虐待」の内容について批判的な意見が出ることはしばしばですが、「私のところでは、こんな支援をします」という前向きな保護者への手伝いの内容が出ることが あまりないのが非情に残念なところです。
「なにができるのか」を考えること。それは「助けたい」という意思の表れなのです。(げんき)
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